2012年3月11日日曜日

 
 ヴィーテ・イタリア オーダーメイドツアー 旅行記  その4  

   パルミジャーノ・レッジャーノ
   Parmigiano Reggiano
   

  
   すでに凝固は終わって、出来立てのチーズの塊は釜の
   下に沈んでいます。引上げ作業直前の風景。

  
   『チーズの王様』

   誰がこの呼び名を否定できるでしょうか!(笑)
   
   確かにそれに匹敵する質感のある堂々たるチーズは他にも存在します。
   でも、世界の注目度、知名度、そして味わいの風格や気品、そして生産者
   たちの確固たる基準の高さ・・・・・トータルな意味での『王様』は今のところ
   パルミジャーノ・レッジャーノ以外、ありえない!という気が僕はしています。

   「パルマの⇒ パルミジャーノ」
   「レッジョの⇒ レッジャーノ」

  という二つの都市の名前が重なってチーズの名前になって いる
  ちょっと面白い例じゃないかな。

  地図を見てみましょう。

           

  これがエミリア・ロマーニャ州。9つの県に分かれている。
  (色がついているのはワイン生産地です ⇒ コチラ )

  左からピアチェンツァ県、パルマ県、レッジョ・ネッレミリア県、モデナ県
  ボローニャ県、右上から下にフェッラーラ県、ラヴェンナ県、フォルリ・
  チェゼナ県、リミニ県。

  つうことは、パルミジャーノ・レッジャーノは左から2番目のパルマと
  3番目のレッジョだけで造られているのかな、と思いきやさもありなん。

  生産地はその右隣のボローニャ県や北のヴェネト州マントヴァ県に
  までまたがっています。

  ほら、キャンティだって、クラッシコとそれ以外のキャンティがあるじゃ
  ない?それに良く似た現象だ� �思ってください。

  
  さて、アチェート・バルサミコ・トラディツィオナーレ・ディ・モデナの
  醸酢場を訪れた次の日のチーズ工房にお邪魔しました。

  搾乳作業は朝の4時、5時からでこれも見たかったのですが、やはり
  ハードで短期間の旅行ではそこまではしにくい、ということで凝固作業の
  見れる8時ごろにアポを取っておりました。

  ホテルにパルミジャーノ・レッジャーノの品質保護協会の女性が迎えに
  来てくれて、チーズ工房に案内してくれるという手はずでしたが、来てくれた
  女性はパルマの観光ガイドの方で、品質保護協会が委託する形で派遣された
  ガイドでした。

  『10年以上、チーズのガイドもしてるから心配しないでね!』

  さすがは、パルマ!ガイド業にしっかりとチーズも入っている辺りはやはり
  イタリアで最も食のレベルが高いと言われるパルマだけはある!!


自由の作家は、ビデオに来ていない場合

  それに皆さん、知ってました?パルマって、マクドナルドが潰れてしまう街
  なんですよ!それだけ、故郷の味が愛されている町、またはアメリカナイズ
  された文化に嫌悪感のある街ということができるかもしれないですね。

  さて、チーズ工房に到着するとドイツ人らしき御一行様もいらっしゃってガイドの
  彼女はドイツ人に英語で、我々にイタリア語で同じ事を二回繰り返さなければ
  ならない大変なことになっていました。

  品質保護協会のいわばダブルブッキング(!)なのですが、彼女の責任じゃ
  ありませんし気にすることでもないのですが、彼女は非常に恐縮していました。

  

  

  まずは巨大なボイラーが並んだ部屋に通されます。この辺りはフレッシュな
  ミルクの匂い、少々動物臭い匂いがプンプンと立ち込めています。

  これだけ大量のミルクを目の当たりにすることはありませんよね(^^;)

  

  

  ボイラーの列の一段上ったところにこれらの平たいステンレス槽がありまして
  ここに前日に搾乳されたミルクを一晩寝かせます。

  底が浅いので簡単に脂肪分とミルクが分離します。そして上に浮かんだ
  脂肪分は取り除き(バターや生クリームなどになります)、翌朝搾乳された
  ミルクと50%ずつの割合で混ぜられ凝固釜に移されます。

  

  一段上ったところから凝固作業が見学できるようになっています。

  

  窓際にかの有名な(って僕が勝手に思ってるだけなんだけど・・・)
  ミルクの攪拌器が見えました。提灯の和紙を取ったような丸いやつです。

  これを使ってミルクが凝固する過程で攪拌することによってパルミジャーノの
  「木目」が生まれます。

  業者によってはプロペラ方のものもあるようです。
  
  
  さて、凝固したチーズを取り出す作業は、まだその準備が整っていない
  ということで、別室に案内されました。

  そこに広がる光景に歓声が上ります!

  

  これは、塊になったチーズを飽和食塩水に漬け込む行程です。イタリア語では
  サラトゥーラ Salatura といいます。

  

  約20〜25日、この食塩水に漬け込まれたチーズは、それでも中心部分
  まで塩分は到達していないそうです。

  その後の熟成中にじわじわと塩分が中心部分まで浸透していきます。

  

  それにしても、何とも奇妙な光景です。チーズの色合いが白いんですけど
  決して綺麗とはいえない食塩水に浮いていますんで(少し脂肪分が水に
  浮かんでいます)、イキイキとした白ではないんですね。


ダークサイドに誰がターン

  「チーズの土左衛門」という感じです(^^;)

  この辺りは、見事に食塩と乳臭さが交じり合った結構キツイ匂いがしています。

  そう、「ペコリーノ・ロマーノ」・・・ご存知でしょうか?

  乳臭〜くて、しょっぱいチーズ。まさにそんな感じの匂いです。

  さて、大釜での凝固作業に戻ります。

  

  職人さんたちが麻の布を操りながら大釜の中をモゴモゴとやって
  おります。

  

  しばらくすると凝固したチーズの巨大な塊が麻にくるまれて出現します!

  

  鉄棒に塊を結わいつけます。

  残りの液体部分(ホエイ=乳清)は、一部をリコッタチーズにして残りを
  フスマとトウモロコシを混ぜて豚の餌にする。

  この餌を食べる豚がプロシュット・ディ・パルマ(パルマ産生ハム)になる
  というわけ。

   フフフ・・・なんて素敵なリサイクルなんだ!!

  さて、やはりここでリクエストしなきゃいけません!

  「出来立てのチーズ、食べさせて!」と。

  
  ガイドさんが職人さんに伝えてくださって、めでたく(!)試食できること
  になりました。

  「決して美味しいものじゃないわよ!!」

  とガイドさんは何度も念入りに忠告してくださいました(^^;)

  

   キュッキュッキュッキュッキュ・・・

  うおぉ〜〜〜〜!

  10年前、モッツァレッラチーズの工房を早朝訪ねて試食した記憶が蘇りました!

  そう、噛むとチーズと歯の摩擦でキュッキュッキュとまるでガラス掃除を
  するかのような小気味の良い軽快な音が口の中から鼓膜に伝わって
  くるんです。

  見た目は気泡だらけで、触感はちょっと硬い木綿豆腐のようなんですけど・・・。

  確かに、味は驚くほど感じられませんでした。もちろん、ミルクの香りは
  あるのですが、完成品ほどミルクの香りはありませんし、ましてや複雑に広がる
  香味などかけらもありません。

  でも、これが僕にとっては嬉しい発見でした。

  このチ� �ズの原型から2年という熟成を経ることによって「王様」が誕生する
  のだと実感できましたから。

  500リットルのミルクが凝固して、熟成すると40キロになるんですから・・・ね。
  
  味の変化、変貌ぶりと熟成という時間の流れの間に人間の叡智を感じない
  ではおれません!!

  というか、ほとんど「何考えてんねん!」の世界ですね。
  だって、凄すぎますって!!!・・・・興奮しすぎですかね(^^;)

  さて、次なる部屋へ案内されると、またまた大歓声が起こってます。

  ふ〜〜〜っと、ほのかなカビの匂いが伝わってきますから、部屋に入る前に
  そこが熟成庫であることが分かります。

  


腹筋を行う方法

  全部でいくつあるか聞きましたが、数は忘れちゃいました(^^;)すいません。

  

  

  

   週に一度、一つ一つのチーズの向きを変えて、周りに付着したカビを
  落とします。

  

  確か、熟成を1年終えると、チーズの検査官がやってまいります。これは
  品質保護協会の回し者ではなく、第三者が厳格に客観的に行うのですが
  このチーズのいたるところを小さなハンマーでたたきます。

  その時に音が出るのですが、もしチーズの中に空洞があれば音の響きが
  変わりますよね。そして、その空洞はチーズの熟成に悪影響を及ぼしますから
  その場でパルミジャーノとしては売れないレッテルを貼られます。

  音は、健康的な場合、残響が残らずにボンッボンッボンと鈍い感じで鳴るのですが
  空洞のある不健康な場合は、ボ〜ンと残響がしっかりと残るんです。

  このチーズは相当に重症のようで、僕が聴いてもはっきりとその違いが分かる  ほどですが(ちゃんと訪問客用に用意してくださっているんですね)、検査官は
  わずかな音の違いも聞き分けられるそうです。

  

  これがハンマーです。何だか、チーズを叩いているというよりは大きな
  皮革製品を叩いているような感じがしました。

  

  その後はテイスティングタイムです

  バートン・アンダーソン曰く・・・

  「パスタ好きなら誰でも知っているチーズ。でも、産地エミリアで大きく
  切り分けたばかりのチーズからえぐるように割りとった、一口大のものを
  賞味しない限り、正式名"パルミジャーノ・レッジャーノ"が、なぜチーズの
  王様として今なお君臨するのか、すんなり腑に落ちないだろう・・・」

  「産地エミリアで」

  「えぐるように割り取った」

  「一口大のもの」

  フフフ・・・・しっかりこの三拍子揃ったパルミジャーノを頂きましたよ!!

  あのね・・・しっとり感が全然違うんですよ!!そして香りの凝縮感!!

  ミルクと牧草の香り、そしてアーモンドやヘーゼルナッツの香り、塩気は
   もちろんしっかりありますが、それ以上に触感の滑らかさ、しっとり感
  そしてミルクが凝縮した甘みがすごい!!

  もう口蓋の中は味覚の嵐です。それも目まぐるしい快感の!!

  偉大なワイン同様、余韻の長さも尋常じゃああリませんぜ!!

  もう、「どないやっちゅうねん!!」というぐらいにその旨味の力強さに
  感動!!涙が出そうです。

  合わせるワインは・・・・・ランブルスコです!!(^^;)


  写真を撮り損ねましたが、如何に「王様」とはいえ、こんなラフなスタイルで
  しかもランブルスコという地元の田舎ワインとともにいただくパルミジャーノほど
  艶かしいものはありません(^^;)

  確かに、パルミジャーノは洗練と気品さえ感じさせる質感を兼ね備えた
  チーズです。ですから、あらゆる赤ワイン、それもモダンなスタイルの
  ものにもよ〜〜く合います。

  僕のイベント「高嶺の花」でも何度となくその相性に恍惚とさせられました(^^;)

  でも、この地で立ち食いしながら、ランブルスコとともにつまむパルミジャーノ・・・
  これは、ちょっと凄すぎました!!そういう次元を超越しています!!

  どう表現したら良いのだろう・・・・。

  極限の洗練は、コテコテの土着性に宿る!!

  気分は「びっくりハウス」か「忍者屋敷」!!

  洗練と素朴は裏腹というか、どっちでもいいや!というか・・・
  なんか、とにかく凄すぎるんですね・・・。

  チーズというその土地の純粋な土着性を我々は様々な情報の中で
  どうも特別視、あるいは神聖視しすぎているのかもしれません。

  純粋でしかも深い味わいを持ったパルミジャーノと、なんら言葉を必要と
  しないランブルスコがその土地で違和感なく共存している現実を実感する
  ことは、この旅の醍醐味でもあり、また天国にも昇る様な幸せな体験なんだと
  感じ入った次第です。

  (自宅に 持っていたパルミジャーノの本を帰国後開いてみたら全く同じ
   チーズ工房でした。やはり品質保護協会のお墨付きの工房なんですね)
  

  パルミジャーノ・レッジャーノチーズについて素晴らしい取材をしている書物!
  超オススメです。↓

  

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